ボクの中のキミへ
柚を助けたい一心で俺は毎日勉強した。

だから彼女なんて作る気もない。

今の俺の唯一の楽しみといえば、こうやって帰り道に柚とゆっくり会話する事。


「今日は何のテレビ見ようか柚」


返事がない。


「柚?」


柚はテレビの話しになると、いつもなら食いついてくる。

俺はこの時初めて柚の異変に気付いた。


「柚!返事しろよ!」


俺は不安になり必死になった。


(‥ん‥ゴメン‥少し眠くて‥何て?)


こんな事、初めてだった。


「柚‥」


家に帰ってからも、柚の反応は鈍かった。

いつもなら勉強する時間だけど、何も頭に入らない。

柚からの返事がなくなるんじゃないかと不安でならなかった。


(‥海君‥)


その夜、机に向かって柚の事を考えている俺に、柚が話しかけた。

今日久しぶりの柚の声は弱々しかった。


「‥ん?」


俺は勉強しているふりをした。
柚に心配をかけるのだは避けたい。


(私ね‥海君との約束‥守れないかもしれない。)


俺の鼓動が速くなる。


「‥どういう意味?」


(私ね、海君との約束守れないかもしれない。)


意味なんて分かっている。


柚が‥


いなくなるかも知れないという事だ。
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