ボクの中のキミへ
こんなに悲しい日は、人生で初めてだった。

いくら辛くても時間は止まってくれず、朝は訪れる。

朝になり、俺は以前行った柚が眠っている病院へ向かう事にした。


病院に着き、前と同じ病室に向かう。


「‥あら」


病室を開けると、柚のお母さんが寂し気な笑顔で声をかけてきた。

俺を覚えていてくれた。

奥には‥柚が眠っている。


「来てくれてありがとう‥柚はもう‥」


辛い。

柚‥やっぱり辛いよ。

頼むから‥
何か話しかけてうれよ‥


「‥知ってます。昨日柚と最期に話しました‥」


俺の目に、一筋の涙が零れ落ちた。


もう、変な子だって思われてもかまわない。

柚がいた事、ちゃんと存在した事を伝えておきたいんだ。


「海‥君?」


予想外な言葉が返ってきた。
柚のお母さんがなぜ、俺の名を‥?


「‥違うわよね‥。ごめんなさい。息を引き取る前にそう口にしたから。」


柚が‥?


「海は‥俺です。」


最期に柚が俺の名前を呼んでくれた。


「やっぱりあなたが‥」


柚との関係を聞かれるかと思った。

でも、その事を柚のお母さんは何も聞かない。


「前に海君に言われて、私この子が目を覚ますの信じてたのよ‥」


柚のお母さんの肩が、また小さくなったような気がする。
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