ボクの中のキミへ
柚が僕に入ってから1年が経ち、僕は小学4年生になった。


柚は今でも僕が学校で友達と話していると、自分が興味のある話題になると入りたがる。


その度に僕は声を出して怒った。


だから友達は、僕を徐々に【一人で話すおかしな奴】だと思うようになっていった。


それでも柚のお陰で、成績だけは良かった。

学年のトップまで上り詰め、親に文句一つ言われず遊びに行く事ができる。


宿題もテストも全て、柚にやらせた。


僕が友達と遊んでいる時も、柚は僕の中で勉強している事が度々あった。



そんなある日、家に帰ると母が深刻な顔をして僕を呼び止めてきた。


「なに?成績なら落ちてないよ。」


母が僕に話す事は、勉強の事しかない。

そう思い込んでいたが‥甘かった。

予想外な話しに僕は驚かされる。


「成績の話しじゃないの。海‥最近部屋で誰と話しているの?」


母の僕を見る目は、今まで見た事のないような不安な顔だった。


「誰って‥独り言だよ」


「お母さんね、いいカウンセリングの先生紹介してもらったの。一緒に行きましょ?」


僕は病気と思われているらしい。


「‥そんなの必要ないって」


そう言っても母は僕を心配した。


「きっと勉強のしすぎで疲れが溜まってるのよ‥この1年間すごく頑張ってるから」



勉強のしすぎ‥?



何も言えなくなって自分の部屋に駆け込んだ。



僕は勉強なんかしていない。


毎日勉強しているのは柚だ。
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