ボクの中のキミへ
この時僕は、初めて柚の事を考えた気がする。


僕が友達と遊んでいる時も、少し柚が会話に入ってきただけで僕は怒った。

僕の機嫌が悪い時には、いつも持ち歩いている水晶のお守りを割る仕草をして柚を困らせた。


僕は何もしていないのに成績だけが上がる。


本当に僕は最低な人間だ。


この時まで、僕は柚が植物人間だという事さえも忘れ、まるで僕の所有物のような扱いをしていた。


「ごめん‥柚。」


いつ目が覚めるかも分からない柚。


本当はこのまま目が覚めずに死ぬかもしれない‥


誰よりも辛いのは柚なんだ。


なのに柚は、弱音を吐くこともなくいつも明るく振る舞った。


そんな柚を利用した最低な僕。


(どうしたの海君?)


「僕‥これからは一緒に勉強するよ。分からない所教えてくれる?」


(‥うん!)


夏祭りで見た寂しい顔の柚が、僕の中で初めて嬉しそうに笑った気がした。


この日を境に、僕と柚の関係が変わりだした。


成績は少しだけ落ちてしまったけど、僕は心から柚の意識が早く戻る事を祈るようになった。

まあ君とはあの新学期以来気まずかったけれど、最近はまた仲良くしている。


そして僕の中に柚が入ってから、柚の意識が戻る事もなく月日が流れた。


僕は中学3年生になっていた。
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