おべんとう【短編】
「今日は、学食にしようかなって思ってたんだけど……」
「学食ー?お金かかるじゃん」
「……良かったのに。作らなくて」
出るのはそんな言葉だ。
いいんだよ?
忙しいんだから、お母さんは。
昨日も遅くまで起きてたじゃん。
もっと、ゆっくり寝ててもいいのに。
昼ご飯くらい、自分で用意出来るんだよ?
「また反抗的な態度取って……。あんたはありがとうも言えないの?」
何も返さず、髪を結んで、制服に着替える。
朝ごはんをパパッと食べて、お母さんが作ってくれたお弁当を、カバンに突っ込んだ。
「いってきまーす」
「はーい、行ってらっしゃい」
玄関を出てしばらく歩き、ちらりと後ろを振り返ると。
家の窓から、毎日必ず、小さく手を振るお母さん。
私もちょっとだけ振り返し、前を見て学校に向かった。