恋する季節 *- confession of love -*
「早坂さんも可愛くてモテるけどさ、そんな事はしない真面目なタイプだし。
そうだろ?」
「……まぁ、好きじゃない人とは付き合ったりはしませんけど」
「だろ? だから真面目な早坂さんにはあんなヤツ似合わないよ。
早坂さん可愛いから、外見的に黒崎と釣り合ってるとは思うけど、でも性格的にはやっぱりさ……。
気の優しい早坂さんの事だから、きっと強気に来られて断れなかっただけなんだろ?」
「そういうわけじゃ……」
「黒崎に言いにくいなら、俺から話してみてもいいしさ。付け込まれたままでいる事ないよ。
とにかく俺の事真剣に考えてみてよ」
「でも私、本当に……」
「黒崎なんかより、俺の方がよっぽど……」
「――俺よりおまえの方がよっぽど、なんだよ」
今まで、ふたりの声の他に聞こえていたのは、遠くの方でざわざわと騒ぐ声だけだった。
それを遠くに聞きながら、購買に急ぐ生徒の声だろうなと考えていた美琴だったが、今の声は確かにこの教室からで。
しかも、自分のすぐ後ろから聞こえてきたように感じて、慌てて振り向く。
誰かは、振り向く前から分かっていた。
ずっと……二年近く美琴が隣で聞いてきた声なのだから。