恋する季節 *- confession of love -*
美琴の言葉に周りを見渡した彩乃は、顔見知りだらけのNランド入場口を見て、ため息をつく。
人数からして大学関係の女子全員が大和絡みではないようだったが、大和に付きまとっている代表格の女子が数人いるのは確認できた。
恐らくあの辺が今回の事を企てたのだろうと判断して、彩乃がその辺一帯を睨みつける。
「大学関係の子には浴衣指定メールが回ったらしいからね。
それにここ、夜花火打ち上げるから、一般の人でも浴衣多いみたいだし」
「花火、楽しみだよね。私、今年初めてなの」
「でもここで見られなくても、夏休み黒崎とどこか行ったりするんでしょ?」
「うん……少しは」
「夏休み初日なのにもう約束取り付けてるなんて、黒崎も必死ね」
まぁ今日に限っては私も必死だけど、とは言わずに彩乃が心に静かに闘志を燃やす。
なんとしてでも今日大和にいい思い出ができないと、ライブチケットが渡してもらえない。
だから多少手荒な手段を使ってでも、大和がいい思いをしてくれないと彩乃が困るのだ。
「間接キス……じゃさすがに生ぬるいだろうし、それ以上か……。
せめて手を繋いでふたりきりに……」
「? なにぶつぶつ言ってるの?」
「ああ、ごめん。独り言」