恋する季節 *- confession of love -*


大和の周りには、大和を囲むようにしてたくさんの女子たちがいる。
その中に浅海の姿もあって……浅海も美琴の方を見ていた。
そして、お願い!とでも言いたそうな顔をして、両手を顔の前で合わせる。

恐らく、ここではまだ大和と一緒にいさせて欲しいという事なのだろうというのが言葉はなくてもなんとなく美琴にも分かった。

大和を大事にしたいなら、他の誰かを傷つける覚悟をしなくちゃいけない。
そんな風に思ったのは事実だし、それでいいと決意もした。
だから今だって、浅海のお願いなんて無視して大和の腕を引くべきなのかもしれないとも考えた。

だけど……。
美琴を止めるのは、浅海の大和を見つめる表情だった。
必死に笑っている、まさにそんな感じの浅海に胸が痛むのはきっと、何度も振られた相手に普通に話しかけるだけでもとても勇気がいる事なんだろうというのが美琴にも想像できるからだ。

自分を四度も拒絶した相手をまだ好きで、傷つきながらも必死に話しかけている。
今日が最後だと決めて。

そんな姿を見た上、本人の浅海にお願いされてしまえば、お人よしの美琴が自分の意識を貫き通せるハズがなかった。
今日くらい……そんな気持ちさえ出てきてしまう。


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