恋する季節 *- confession of love -*
Nランドのお化け屋敷は、美琴の想像していた普通のお化け屋敷とは違っていた。
お化けと言っても、日本のものではなく西洋のお化け屋敷で、恐らくNランドのオリジナルキャラクターなんだろうと思われる可愛らしいお化けも多かった。
仕組みも、人が驚かせるわけではなく、すべてが機械的な仕掛け。
棺の中に寝ていた吸血鬼が、ある程度近づくとすっと起き上がりにやっとした口もとから血がしたたり落ちたり、急に近づいてきた足音と共に地面が揺れ出したと思ったら、目の前に大きなモンスターが映し出されたり。
飾ってある肖像画が動いたり。
怖がらせるよりも、見て楽しむものだと理解した美琴だったが……どこからともなく聞こえてくる悲鳴を聞く限り、そう思うのは自分だけなのかもとも感じていた。
「あの、美琴ちゃん……怖くないの?」
隣を歩く名前も分からない男子に聞かれて、少し戸惑いながら頷く。
「うん」
「えっ、そうなんだ……なんか意外だね。もっと怖がると思ってたのに……」
話しかけてくる男子にまた、うん、とだけ短く答えて先に進む。
暗い中で知らない男子と二人きりという状況があまり心地いいとは思えない美琴は早くここから出たかった。