恋する季節 *- confession of love -*
「あの、美琴ちゃん……手、繋いでもらってもいいかな?」
「手……? それはちょっと……浴衣の袖とかでもいい?」
本当なら服の一部でも触られるのには抵抗があったが、仕方ないと思い妥協案を出すと、男子は少し残念そうにしながらも、じゃあ……と美琴の浴衣の袖を掴んだ。
ここまでくる間は、それなりの距離をとって歩いていた美琴だったが、袖を掴まれると必然的にふたりの距離が近くなる。
そこに少し嫌悪感を感じながらも、出口の方に向かって歩き出す。
10歩程度歩いたところで、辺り一面が真っ暗になる。
今までも暗くはあったが、ところどころに青白いランプはあったから、視界も数メートルほどはあった。
けれど、今度は本当に闇で、何も見えない。
美琴は、そういえば……とここに入る前に彩乃に聞いた事を思い出した。
「ラストはね、真っ暗になったところに急に墓地が現れて、そこから3Dのゾンビがぼこぼこと地面を突き破って出てくるのよ。
そこがこのお化け屋敷の一番の見せ場なの。
最後はゾンビに向かって歩いてって、ゾンビの向こうにあるゴールを目指すってわけ」
それを思い出し、美琴は慌てて袖を掴んでいる男子に忠告しようとした。