恋する季節 *- confession of love -*
その通りに視線を移すと、しりもちをついた体勢でこちらを見ている男子がいた。
驚いているような、苦笑いしているような、なんとも言えない表情だ。
しかもどのタイミングで切ったのか、額からは少しではあるが血が出ていた。
「あ、大丈夫? やっぱり倒れて……」
「倒れたんじゃねぇよなぁ?」
言葉を遮るようにしてそう言った大和に、男子はまずいとでもいいたそうな顔をしていた。
どういう意味だろうと美琴が視線を戻すと、大和は男子を睨みつけたまま説明する。
「あいつ、おまえに抱きつこうとしてたんだよ」
「え……?」
「俺、入るのやめて外で待ってたんだけど、そしたらこいつの友達が、こん中でこいつがおまえに抱きつく計画立ててたとかいう話してて。
だから慌てて逆走してきた」
「逆走?!」
「ああ。係り員にすげぇ止められたけど振り切って」
お化け屋敷を逆走してきた事に驚きを隠せなかった美琴だったが、今はそこにばかりも驚いてもいられないと、次の疑問に移る。
「でも抱きつこうとしてたって……あの人、お化け怖いって言ってたし、今も腰抜かしてるのに……?」
「あれは、おまえに抱きつこうとして転んだんだろ。暗かったから分からなかったんじゃねぇの?」
「あ……私がしゃがんでたから、それで……?」