恋する季節 *- confession of love -*
それに気づいた美琴は、信じられないような顔で大和の小指を見つめて……それからムっとした表情になる。
大和は、しくじった……もっと手こずってみせるべきだったと頭の中で猛省しながらも黙って美琴の指先を見守った。
こんなに美琴が頑張ってんだから空気読んで結ばれてやれよ!と強い念を糸に送りながら。
だがいくら大和が強く祈ったところで、糸が自ら蝶々結びになるわけもなく。
結局団子状態で絡まったまま美琴の手が止まる。
そして大きなため息が落とされた。
「頂上着いちゃったね」
「え、ああ……ここ頂上か」
前後のゴンドラよりも乗っているゴンドラが高い位置にある事を確認した大和が答えると、美琴が落ち込んだ声で言う。
「せっかくだし結びたかったのになぁ」
「……これって、キレイに結ばなきゃいけないって決まりはないんだろ?
ルールにも、小指にって書いてあるだけだし、何結びとも指定されてない」
見上げていた美琴を、ルールを読み返していた大和が見て笑顔を作る。
「何結びでもいいなら、美琴のそれもセーフだろ。ちゃんと小指に絡みついてるし」
……何結びかは分からないけれど。
最後の言葉は言わずに笑った大和に、美琴は自分の小指を見つめ直して……そして呆れ笑いを浮かべる。