恋する季節 *- confession of love -*
「八重くらいの団子結びだね……」
「まぁ……あれだ。八って末広がりで縁起いいって言うし、固く結んである分、願いも叶うだろ」
「……うん」
嬉しそうな笑みで見上げてきた美琴にうっかり射抜かれた大和が、う……と声にならない声を出してからそっぽを向く。
それと同時に、外からドォオン……!という音が聞こえてきた。
大和が腕時計に視線を移すと、20時半。
花火の開始時間だった。
お城の影の向こうに、打ち上げられた色とりどりの花火が散っていくの見える。
「お城に隠れちゃってるけど、少し見えるね」
「ああ。俺はこれくらいで十分だなぁ。人ごみに混ざってまで近場で見たいとは思わないし」
十分というか、むしろここがいい。美琴とふたりきりのここが。
もごもごしながらもそう言った大和だったが、美琴があまりに無反応なのが気になってチラっと様子を見ると、美琴の視線は完全に花火に向けられていて。
どうやら大和のぼそぼそとした声は届いていないようだった。
もう何十回目か分からない肩すかしにガッカリと肩を落としながらも、考えてみればそんな事伝わらなくても今のこの状況だけで十分幸せだと思い直す。
もう少し大和が関係を急いだりはっきりさせようとすれば、発展するかもしれないふたりの関係。
けれど、美琴といられればそれで……と思えるほど惚れ込んでいる大和は急速に関係を進展させる気はないようで。