絶滅危惧種『ヒト』
正午になって、直樹は食堂に向かった。
早くワクチンを作らなければならないのに、一向に作業が進まない。
やはり心のどこかで、国立感染症研究所がメインでやっているから……というのがあるのは否めなかった。
食堂に入ったところで、突然前を歩いていた看護師の女性がしゃがみこんだ。
「どうかしましたか?」
直樹は咄嗟に女性の背中に手を当ててしゃがみこむ。
「すみません」
看護師の女性が振り返って謝った。
「うぷっ、うぇええええええ」
次の瞬間。
その口から放たれた吐しゃ物が、直樹の顔を直撃する。
直樹はそのままバランスを崩し、後ろに倒れこんだ。
「きゃぁああああ」
「うわぁああああ」
突然の異臭に、食堂の中に悲鳴が上がる。
直樹は急いで立ち上がると、厨房の中に駆け込んでシンクで顔を洗った。
(まずい。まずい。まずい。まずい)
確実に今、口の中に彼女の吐しゃ物が入ったのだ。
――感染!
その言葉が頭の中に大きく浮かび上がり、直樹は気が狂ったようにうがいをする。
それでも一向に取り去れた気がしなかった。
ダメかもしれない……。伝染ってしまったかもしれない。
大騒ぎになっている食堂を見ながら、直樹は呆然とそのまま立ち尽くした。
早くワクチンを作らなければならないのに、一向に作業が進まない。
やはり心のどこかで、国立感染症研究所がメインでやっているから……というのがあるのは否めなかった。
食堂に入ったところで、突然前を歩いていた看護師の女性がしゃがみこんだ。
「どうかしましたか?」
直樹は咄嗟に女性の背中に手を当ててしゃがみこむ。
「すみません」
看護師の女性が振り返って謝った。
「うぷっ、うぇええええええ」
次の瞬間。
その口から放たれた吐しゃ物が、直樹の顔を直撃する。
直樹はそのままバランスを崩し、後ろに倒れこんだ。
「きゃぁああああ」
「うわぁああああ」
突然の異臭に、食堂の中に悲鳴が上がる。
直樹は急いで立ち上がると、厨房の中に駆け込んでシンクで顔を洗った。
(まずい。まずい。まずい。まずい)
確実に今、口の中に彼女の吐しゃ物が入ったのだ。
――感染!
その言葉が頭の中に大きく浮かび上がり、直樹は気が狂ったようにうがいをする。
それでも一向に取り去れた気がしなかった。
ダメかもしれない……。伝染ってしまったかもしれない。
大騒ぎになっている食堂を見ながら、直樹は呆然とそのまま立ち尽くした。