絶滅危惧種『ヒト』
直樹は続けて橋本留美に電話をかける。


同じ職場で働いていて、直樹と恋人の関係にある留美は、実家の母親が脳梗塞で倒れてしまった為に、先週から実家のある岡山市に帰っていた。


『もしもし』


すぐに留美が電話に出る。


「今電話大丈夫か?」


『うん』


「実は……例のウイルスなんだが」


『まさか……新しい患者が出たの?』


「ああ、それもかなりの数」


『そんな……』


「落ち着いて聞いて欲しいんだが……」


『な、何……?』


「竹井教授も発病して亡くなった」


『嘘!』


「嘘じゃない……。他にも外来のドクターや、臨床医も……」


『そんな……』


「それに……」


『それに……何?』


留美が不安げに聞く。


「食堂で看護士が倒れて……俺もその吐しゃ物を浴びてしまった」


『えっ、嘘?』


「嘘じゃないんだ……」


直樹は言葉に詰まった。
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