絶滅危惧種『ヒト』
「ねぇ直樹、ワクチンは?」


「え?」


「ワクチンはまだ出来てないの?」


「ああ、ウイルスが未だに不活化しないんだ」



「そんな……」


「それで……」


「何?」


「生ワクチンを作って投与した」


「えっ!? だって、そんなこと」


「仕方ないだろ」


「大丈夫なの?」


「分からないよ。でも……何もしなければ死ぬのを待つだけだ」


「そんな……」


「今回のは本気でヤバい。おそらく世界中に蔓延することになるだろう」


「そんなこと……」


「とにかく一刻も早く正体を解明する必要がある。それに……もしワクチンが効かなかったら、君とももうあえなくなる」


「イヤよ! 死んじゃイヤ」


「俺だってまだ死にたくないさ」


直樹は電話の向こうの相手に向かって笑顔を作った。
< 109 / 223 >

この作品をシェア

pagetop