絶滅危惧種『ヒト』
静かな一日が終わる。

そしてその翌日も何も起こらずに、時間が過ぎていった。


何もなかったかのように、いつも通りの生活。


ただ……東城医大病院の外来は、普段の混み具合からは考えられないほど、患者が少なかった。


さらに時間が過ぎ、アレ以来何も起こらないまま、土曜日を迎えた。


光ケ丘高校は土曜日には授業がない。


大山智孝と久須美萌香は、都心に向かう電車に乗っていた。


バレンタインデーに萌香から告白して、付き合い始めたばかりの二人は、ホワイトデーの今日、智孝がお返しのプレゼントをする為の買い物デートなのだ。


付き合い始めてちょうど一ヶ月。

早いといえばまだ早いが、そろそろ一歩先に進みたい。智孝はそう思っていた。

さすがにエッチまでは難しいだろうけど、キスくらいはしたい。

そんな邪まな想いを抱いた罰が当たったのか、電車に乗った頃から、お腹の中が気持ち悪くなっていた。


「どうかしたの?」


つり革に掴まった萌香が心配そうに見つめて来るけど、せっかくのデートなのだから、ここは我慢と智孝は何でもないと微笑んだ。


新宿駅で電車を降りて、少し歩いたところで、智孝はうずくまった。


「ちょ、大山くん?」


萌香が心配そうにしゃがむ。


次の瞬間。


「うぇえええええ」


智孝の口から、黄色い液体が噴出された。

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