絶滅危惧種『ヒト』
「いやぁああああああ」
萌香が悲鳴をあげる。
混雑した駅の中で、二人の周りだけ人混みが分かれた。
「大丈夫か?」
事情を知らない中年の男が、悪臭に顔を歪めながらも、しゃがみこんで智孝の様子を見る。
「ダメだ。この子死んでる」
やや遠巻きに取り囲んで見ている者たちに語りかけた途端、まるで係わり合いになりたくないとばかりに、立ち止まって事の成り行きを見ていた者たちが立ち去っていく。
その全ての者たちに、悪魔が憑り付いてしまったことに誰も気がつかないまま……。
「誰か、駅員を呼んでくれないか」
男の問いかけに反応する者はいないかと思われたが、誰かが通報してくれたようで、すぐに数人の駅員が駆け寄ってきた。
智孝の身体を数人がかりで担ぎ上げ、そのまま運んでいくのを見守っていた萌香は、突然お腹の中に、何とも言えない気持ち悪さを感じて自分のお腹を見る。
(何だろうこの感じは?)
痛いわけではないのだけれど、何とも言えない気持ちの悪さ。
萌香は智孝と同じクラスではないから、智孝のいるクラスで起きた朋美の事件を直接見ていない。
けれど、あれだけ学校中が大騒ぎになったのだから、もちろん知っている。
そして……智孝がたった今、それと同じような症状で死んでしまったのだ。
突然彼氏が死んでしまって悲しいという想いより、智孝も伝染病に感染していて、自分も感染してしまったかもしれないという恐怖のほうが強かった。
運ばれて行く智孝の姿が、段々揺れ始め二重に見え始める。
次の瞬間……。
「ぅぇっぷ。うげぇええええ」
萌香の口からおびただしい量の液体が飛び散り、萌香はそのまま前のめりに倒れ、そして動かなくなった。
萌香が悲鳴をあげる。
混雑した駅の中で、二人の周りだけ人混みが分かれた。
「大丈夫か?」
事情を知らない中年の男が、悪臭に顔を歪めながらも、しゃがみこんで智孝の様子を見る。
「ダメだ。この子死んでる」
やや遠巻きに取り囲んで見ている者たちに語りかけた途端、まるで係わり合いになりたくないとばかりに、立ち止まって事の成り行きを見ていた者たちが立ち去っていく。
その全ての者たちに、悪魔が憑り付いてしまったことに誰も気がつかないまま……。
「誰か、駅員を呼んでくれないか」
男の問いかけに反応する者はいないかと思われたが、誰かが通報してくれたようで、すぐに数人の駅員が駆け寄ってきた。
智孝の身体を数人がかりで担ぎ上げ、そのまま運んでいくのを見守っていた萌香は、突然お腹の中に、何とも言えない気持ち悪さを感じて自分のお腹を見る。
(何だろうこの感じは?)
痛いわけではないのだけれど、何とも言えない気持ちの悪さ。
萌香は智孝と同じクラスではないから、智孝のいるクラスで起きた朋美の事件を直接見ていない。
けれど、あれだけ学校中が大騒ぎになったのだから、もちろん知っている。
そして……智孝がたった今、それと同じような症状で死んでしまったのだ。
突然彼氏が死んでしまって悲しいという想いより、智孝も伝染病に感染していて、自分も感染してしまったかもしれないという恐怖のほうが強かった。
運ばれて行く智孝の姿が、段々揺れ始め二重に見え始める。
次の瞬間……。
「ぅぇっぷ。うげぇええええ」
萌香の口からおびただしい量の液体が飛び散り、萌香はそのまま前のめりに倒れ、そして動かなくなった。