絶滅危惧種『ヒト』
電話を切った直樹は、そのままそこにあった椅子に腰掛けた。


恐れていたことが、ついに現実のものとなってしまったようだ。


どうすれば良いのか全く分からないけれど、とりあえず弟に病院に来るように伝えた。


弟が発病する前に何とか手を打ってやりたい。

とはいえ、弟がここに来るまでに発病しないとも限らないし、来たからといっても、まだ何の治療法も確立されていないのが現実である。


それに直樹自身も、自分自身に生ワクチンを投与したけれど、本当に効果があるのかさえも分かっていないのだ。


一つ分かったことは、今回の悪魔が、ウイルスではなく細菌だということ。

その為、一応念のために抗生剤も投与しているが、これも効果があるかどうかは分からないのである。


それにしても……

聖人のクラスメイトが三人も同時に発病したとは……。


すぐに厚生労働省にも連絡が入るだろう。


おそらく接触感染ではなく、飛沫感染だと直樹は思った。こうなったら、パンデミックは止められまい。

おそらく……世界中に蔓延するのも時間の問題だと思う。

直樹が暗い気持ちになった時、マナーモードにしている携帯電話が振動した。

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