絶滅危惧種『ヒト』
やきもきしながら待っていると、20分程してようやく聖人とその彼女が到着した。
聖人から連絡を受けて、直樹は一階まで迎えに降りる。
が、そこには聖人とその彼女だけではなく、井上もいた。
井上は立場上、生ワクチンを含む認可されていない薬品の投与を阻止しなければならない。
だが、直樹は意地でも色々考え付くものを投与するつもりだった。
「そんなに睨まなくても、邪魔はしないよ」
井上はそう言って微笑む。
立場的には容認出来ないが、井上だって聖人のことを可愛がってくれている。
どうやら黙認してくれるつもりらしい。
感染症学科に向かう前に放射線科に向かい、CTスキャンで検査をすることにした。
消化器官が腐敗するというのが特徴なだけに、真っ先に聖人のお腹の中の状態が見たかったのだ。
放射線被爆などを考えると、CTよりもMRIのほうが良いのだが、MRIは検査に時間がかかる。今は一分一秒が惜しい。
「実はなぁ直樹」
歩いている道中で、井上が口を開く。
「え?」
「黙ってたけど、感染症研究所でも、すでに死亡者が出てるんだ」
「えっ、どういうこと?」
「だから、この前ここの教授が亡くなった日。今回の病原菌を調べてる感染症研究所の医学者が、五人死んでるんだよ」
「嘘だろ? 感染症のスペシャリストが」
「事実なんだ……」
「そんな……」
「それだけじゃない。厚労省の者も……」
「な……何で黙ってたんだ?」
「立場上、まだ緘口令がしかれていて言えなかったんだよ」
「オマエなぁ!」
「すまん」
頭を下げた井上に対して、直樹はそれ以上何も言わなかった。
聖人から連絡を受けて、直樹は一階まで迎えに降りる。
が、そこには聖人とその彼女だけではなく、井上もいた。
井上は立場上、生ワクチンを含む認可されていない薬品の投与を阻止しなければならない。
だが、直樹は意地でも色々考え付くものを投与するつもりだった。
「そんなに睨まなくても、邪魔はしないよ」
井上はそう言って微笑む。
立場的には容認出来ないが、井上だって聖人のことを可愛がってくれている。
どうやら黙認してくれるつもりらしい。
感染症学科に向かう前に放射線科に向かい、CTスキャンで検査をすることにした。
消化器官が腐敗するというのが特徴なだけに、真っ先に聖人のお腹の中の状態が見たかったのだ。
放射線被爆などを考えると、CTよりもMRIのほうが良いのだが、MRIは検査に時間がかかる。今は一分一秒が惜しい。
「実はなぁ直樹」
歩いている道中で、井上が口を開く。
「え?」
「黙ってたけど、感染症研究所でも、すでに死亡者が出てるんだ」
「えっ、どういうこと?」
「だから、この前ここの教授が亡くなった日。今回の病原菌を調べてる感染症研究所の医学者が、五人死んでるんだよ」
「嘘だろ? 感染症のスペシャリストが」
「事実なんだ……」
「そんな……」
「それだけじゃない。厚労省の者も……」
「な……何で黙ってたんだ?」
「立場上、まだ緘口令がしかれていて言えなかったんだよ」
「オマエなぁ!」
「すまん」
頭を下げた井上に対して、直樹はそれ以上何も言わなかった。