絶滅危惧種『ヒト』
「ねぇ直樹」


「何?」


「どうするつもりなの?」


「どうって言われても……」


「何をやっても不活化しないし、教授が亡くなったことからしても、すでにこの部屋の中も細菌はいる可能性は高いってことよね」



「ああ、まぁ、その可能性はゼロじゃあないけど」


「とりあえず私にもワクチンを打ってくれない?」


「え?」


「直樹は打ってるんでしょ? じゃあ臨床実験は終わってるし」


「でもまだ……俺が感染したのは水曜日だから、まだ分からない」


「それでもいいわ。お願い」


「でも……」


「でも、何よ? 自分だけ助かって、私は感染して死んじゃっても良いってこと?」


「いや、そんな訳ないじゃないか」


「じゃあお願い」


「兄ちゃん。俺たちにも打ってよ」


「いや、だからな聖人、前にも言ったと思うけど、免疫を作るためのモノだから」


「それでも良いから、兄ちゃん頼むよ」


自分を見つめる三人の目。直樹はすがるようなその目を見て、決意を固めた。


すでに感染してしまっている可能性が高い、聖人とその彼女には、効果があるのかどうか分からない。

けれど、何もせずに見殺しにすることだけは出来ないと思った。

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