絶滅危惧種『ヒト』
「いやぁああああああ」


倒れている留美を見て、悲鳴を上げたのは栞だった。

テレビニュースで大々的に取り上げられているし、クラスメイトからの電話やメールで、事態は知っているが、リアルに感染死した遺体を見たのは初めてだったのだ。

それは栞だけでなく、今日は休みの為に自宅にいた梓の家族や、聖人にとっても同じことである。


今まで信憑性のなかった話が、急に現実のモノとなってしまった。


ついさっきまで普通に話しをしていた兄の彼女が、目を見開いて動かない姿で倒れている。


そして……

それは数時間後の自分と梓の姿でもあるのだ。


そう思うと、聖人も叫びだしそうになる。おそらく一人きりなら大声で叫んでいただろう。


何でこんなことになるんだ……。

いつも自信に満ちている兄が、呆然として動かない姿も聖人にとって初めてのことだった。


ふと泣きそうな顔の梓と目と目が合う。

聖人は引き寄せて抱きしめた。



「ん゙ん゙ん゙ぅ」


すぐに後ろで咳払いが聞こえ、梓の父が睨んでいる。


それに気がついた聖人は慌てて梓の身体を放した。


「ねぇ、どうなっちゃうの?」


栞が泣きそうな顔でそう呟く。


だけど誰もそれに答えることが出来なかった。
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