絶滅危惧種『ヒト』
「えっ、何でだ?」
「俺たちも渋谷にいてさぁ、電車で帰って来ようと思ったんだけど、電車の運転士さんが運転中に発病したら、大事故になっちゃうでしょ?」
「あ、ああ、確かにそうだな」
「だからレンタサイクルを借りて帰ってるんだ」
「そうか。確かにそれが正解だな」
井上が頷く。
「じゃあこの自転車を使いますか?」
梓が跨っていた自転車を降りた。
「え? でも、君たちはどうするんだ?」
「私は聖人の後ろに乗ります」
梓はそう言って微笑んだ。
「それは助かるよ。なんせ国立感染症研究所の担当研究員が全員死んでしまったので、頼みの綱はもう直樹だけなんだ」
「ちょ、全員って……」
聖人が驚いて聞き返す。
「全員なんだ。今回の細菌を研究していた全員が発病した。だから少なからず今回の細菌のことが分かっている医者は、もう直樹しかいないんだ」
「でも、兄ちゃんも……」
「いや、確かに電話は繋がらないが、アイツは絶対に生きている」
井上は自信に満ちた顔でそう言い切った。
「何でそう思うんですか?」
気になった梓が口を挟む。
「それは……俺が死んでないからさ。アイツと同じように細菌に携わり、一緒にいた他の者が全員死んだのに、俺は未だに発病していない。だから直樹も絶対に発病していないはずだ」
井上はそう言って頷いた。
「俺たちも渋谷にいてさぁ、電車で帰って来ようと思ったんだけど、電車の運転士さんが運転中に発病したら、大事故になっちゃうでしょ?」
「あ、ああ、確かにそうだな」
「だからレンタサイクルを借りて帰ってるんだ」
「そうか。確かにそれが正解だな」
井上が頷く。
「じゃあこの自転車を使いますか?」
梓が跨っていた自転車を降りた。
「え? でも、君たちはどうするんだ?」
「私は聖人の後ろに乗ります」
梓はそう言って微笑んだ。
「それは助かるよ。なんせ国立感染症研究所の担当研究員が全員死んでしまったので、頼みの綱はもう直樹だけなんだ」
「ちょ、全員って……」
聖人が驚いて聞き返す。
「全員なんだ。今回の細菌を研究していた全員が発病した。だから少なからず今回の細菌のことが分かっている医者は、もう直樹しかいないんだ」
「でも、兄ちゃんも……」
「いや、確かに電話は繋がらないが、アイツは絶対に生きている」
井上は自信に満ちた顔でそう言い切った。
「何でそう思うんですか?」
気になった梓が口を挟む。
「それは……俺が死んでないからさ。アイツと同じように細菌に携わり、一緒にいた他の者が全員死んだのに、俺は未だに発病していない。だから直樹も絶対に発病していないはずだ」
井上はそう言って頷いた。