絶滅危惧種『ヒト』
二日前に入院して来ているから、まだ発病はしていないが、残念ながらまず間違いなく感染しているだろう。



「先生」



「はい」


「ワクチンとかってないんですか?」


「え?」


「伝染病ってワクチンで治るんでしょ?」


「それは……」


直樹は咄嗟に視線を外した。


が、今度はすぐに娘のほうと目が会う。


すがるような目で見つめて来る母と娘。


「あるにはあります。ただ……」



「ただ……?」


「厚生労働省に認可はされていません。でも、僕はそれを投与していて、未だに発病はしていませんが……」



「じゃあ先生。それを私たちにも打ってください。お願いします」


必死で訴えてくる美加子。



「分かりました。すぐに用意をしてきます」


直樹はそう言うと部屋を飛び出した。


そうだ。入院をして三日以内の患者や、お見舞いに来ている者が、まだ院内にいる可能性がある。


直樹はすべての病室を回ることにした。


一旦エレベーターで一番上に上がり、全ての病室を回っていく。


一通りの部屋を回り終えると、生存している患者が17名と、お見舞いに来ていた者も三人いることが分かった。

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