絶滅危惧種『ヒト』
直樹はその全員にワクチンを用意してくると約束をして、感染症学科に急ぐ。
まるで往年の父がシンクロしたような錯覚を覚えていた。
急いで研究室に戻った直樹は、培養している細菌からワクチンを作ると、すぐに入院病棟へと取って返す。
上の階から順番にしていくことにして、エレベーターに乗り込んだ。
最初は九階の原母娘である。
病室に入ると、母と娘は待ちわびていたように、すがる目を向けてきた。
「遅くなりました。すみません」
「いえ、大丈夫です」
謝った直樹に向かって、美加子は笑顔を作る。
直樹は台の上に携帯のバッグを置き、中からワクチンを接種する道具を取り出した。
「皮下注射なので、チクッとします。ちょっとだけ我慢してくださいね」
直樹は美加子の腕を取ると、注射針を腕に突き刺した。
「いっ……」
痛みに美加子の顔が歪む。
母の痛がる顔を見た、娘の陽菜も顔を歪めた。
「じゃあ次は君」
「は、はい」
陽菜は腕を差し出したけど、顔は腕を見ないように横を向く。
チクッとした痛み。
陽菜は思い切り目を閉じて顔を歪めた。
「すみません。僕は他の部屋の患者さんのところにも行かなきゃならないので、しばらく安静にしておいてください」
「はい」
直樹は会釈をすると、急いでバッグを持ち、次の部屋を目指した。
まるで往年の父がシンクロしたような錯覚を覚えていた。
急いで研究室に戻った直樹は、培養している細菌からワクチンを作ると、すぐに入院病棟へと取って返す。
上の階から順番にしていくことにして、エレベーターに乗り込んだ。
最初は九階の原母娘である。
病室に入ると、母と娘は待ちわびていたように、すがる目を向けてきた。
「遅くなりました。すみません」
「いえ、大丈夫です」
謝った直樹に向かって、美加子は笑顔を作る。
直樹は台の上に携帯のバッグを置き、中からワクチンを接種する道具を取り出した。
「皮下注射なので、チクッとします。ちょっとだけ我慢してくださいね」
直樹は美加子の腕を取ると、注射針を腕に突き刺した。
「いっ……」
痛みに美加子の顔が歪む。
母の痛がる顔を見た、娘の陽菜も顔を歪めた。
「じゃあ次は君」
「は、はい」
陽菜は腕を差し出したけど、顔は腕を見ないように横を向く。
チクッとした痛み。
陽菜は思い切り目を閉じて顔を歪めた。
「すみません。僕は他の部屋の患者さんのところにも行かなきゃならないので、しばらく安静にしておいてください」
「はい」
直樹は会釈をすると、急いでバッグを持ち、次の部屋を目指した。