絶滅危惧種『ヒト』
向こうから凄い勢いで車が走って来たのである。


この狭い道で危ないじゃないかと、井上は思った。



「な……」


井上の顔が青ざめる。


走ってくる車の運転手が、前に突っ伏しているのが見えた。



おそらくたった今、走行中に発病したに違いない。


井上は左右を見回したが、逃げ場はない。


もちろん車と対向するだけの道幅はあるから、車の進行状況をよく見れば、交わすことは可能だ。


わずか数秒のうちに、井上はそう思った。


車はすぐそこ。


道の左のほうを走ってくる。


井上はすぐに進行方向に向かって左に交わそうとした。


が……


『ドガッ!』


何と直前で車は左の柵に激突し、反動で井上の方に向かって来たのだ。


「うわぁあああああああ」


井上が目を見開く。


次の瞬間、井上の身体が宙を舞う。


『ドガッ! ガガガガガガ』


激しい音を立てて、車は建物に激突する。


その横で、井上の身体から流れる血が、道路に広がっていった。

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