絶滅危惧種『ヒト』
原母娘の病室へと戻ってきた直樹は、パジャマ姿の母親のほうのパジャマの前を肌蹴る。



そこには岡田と同じ青紫の痣のような跡が、クッキリとついていた。


「まさか……」


直樹は今度は娘の服を脱がせる。


遺体とはいえ、女子中学生のパジャマ姿ではない、普通の服を脱がせるのは、一瞬ためらったが、今はそんなことを言っている状況ではない。


直樹は心の中で謝ってから、陽菜の服を脱がせた。


「やっぱり……」


やはり娘のほうにも同じ跡がある。


直樹は部屋を飛び出すと、階段を駆け下りて七階の患者の部屋に向かった。


部屋に入ると、患者の三宅貴志がベッドの上に倒れている。


やはり発病していた。

三宅のパジャマを脱がせると、同じように青紫色の跡が……。

直樹はその場にへたり込んだ。


間違いない。生ワクチンは皮下で留まらず、生きている細菌は、消化器官を目指して移動したのだ。


つまり……

この患者や、原母娘は直樹の皮下注射によって、死んだことになる。


まさか……


留美が死んだのも、これが原因だったのではないのか……。


俺が……俺が留美を殺した……。


直樹は目の前が真っ暗になった。

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