絶滅危惧種『ヒト』
「どのみち俺たちに残された時間は少ない」


聖人が呟いた。



「だよね……」


すぐに梓が答える。


「今日のパンデミックで、さすがに東京中の人が感染した可能性が高い。そうなったら、四日後に東京から人がいなくなっちゃう……」


「やっぱそうなるのかな?」


「ああ、ほぼ間違いないと思う」


「でも……」


「ん?」


聖人は振り返って梓の顔を見た。


「これだけ身近に発病者がいるのに、私たちって感染してないでしょ?」


「ああ」


「もしかしたら、みんなが死んじゃっても、私たちだけ生き残ったりしないのかな?」


「そうだな……。でも、そうなっても、生き抜くことは無理だろ」


「何で?」


「何でって……人がいなくなるんだぞ。食べ物はどうする?」


「ああ、そっか」


「それだけじゃないよ。例えば食べ物は狩りや釣りで何とか出来たとしても、問題は他にもある」



「他って?」


「例えば電気……」


「ああ、電気が使えなくなるのか? そうだよね。電気が使えないってことは、ほとんど全ての物が使えなくなるってことだもんね」


「うん。今じゃほとんどの物が、電気がなければただのガラクタだ。後……電気といえば、原発もかなりヤバい」


「えっ、原発? どういうこと?」


梓は眉をひそめた。

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