絶滅危惧種『ヒト』
「今日本で稼動している原発はないけど、世界でみれば結構ある」


「うん」


「それらは全て、人の管理の上で安全に稼動しているんだ」



「そうか……。じゃあ人がいなくなっちゃったら」



「ああ、誰もコントロールしなくなった原発は、暴走する可能性がある」


「それって、メルトダウンとかいうやつだよね?」


「ああ、そうだ。世界中の原発がそうなったら、人間だけじゃなく、生物自体が絶滅する」



「そんな……」


梓は絶句した。


直樹の研究室に到着すると、留美の隣にストレッチャーを並べてやる。


「兄ちゃん。必ず細菌をやっつけたら、ここに戻ってくるから」


聖人はまた込み上げてきた涙を拭うと、母と梓を促がして外に出た。


兄に向かって誓ってはみたものの、いったいどうすれば良いのか見当もつかない。


「ねぇ、これからどうするの?」


「とりあえず一旦家に帰ろう」


「うん。でも……」


梓が口ごもる。


「何だよ?」


「ううん。何でもない」


梓は小さく首を振った。


「何だよ。言えよ」


「うん。あのさぁ、国分寺には帰るけど、家には帰りたくない」


「え?」


「ずっと一緒にいたいよ」


梓は泣きそうな顔をした。

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