絶滅危惧種『ヒト』
突然梓の携帯電話が鳴る。


見ると妹の栞からだった。



『もしもしお姉ちゃん?』


「うん。どうしたの?」


『やっと繋がったよ~。ずっと電話してるのに、全然繋がらなくてさぁ~』


「そうなの?」


『そうだよ。多分みんなが一斉に電話してるからだと思うけど、もう一時間以上繋がらないんだもん』


「そっか」


『お姉ちゃんは大丈夫なんだよね?』



「うん。みんなは?」


『うん。みんなまだ生きてるよ』



「そっか、なら良かった」


『ねぇお姉ちゃん今どこ?』



「東城医大病院だよ」


『ねぇまだ帰ってこないの?』



「うん。今から国分寺に帰るけど、自転車だし……」



『そっか。お父さんが心配してるから、早く帰って来てね』



「ああ、うん。分かった」


梓はそう言って電話を切った。


聖人にずっと一緒にいたいと言ったばかりだけど、家族に心配をかけているのも忍びない。


「とりあえず帰ろうか」


梓は携帯電話をポケットにしまいながら、聖人に言った。

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