絶滅危惧種『ヒト』
三人は直樹に手を合わせると、部屋を出て一度自宅に帰る事にした。


「兄ちゃんの葬式、いつ出来るのかなぁ……」


聖人が呟くと、綾乃が顔を歪める。


愛しい息子を一刻も早く、安らかに送り出してやらなければならないのに、

あちこちに遺体が転がっているような状況では、いつ葬式が出来るのかなんて、見当もつかない。


本当にどうなってしまうのだろう。


そういえば、先に病院に向かっていた、井上くんはどうしたのか?



「ねぇ聖人。井上くんはどうしたのかしら?」



「そういえばそうだ。どうしたんだろう?」


聖人も井上のことをすっかり忘れていた。



「電話……母さん、井上さんの電話番号知ってる?」


「いや、知らないわ」


「そっか……。そうだ。兄ちゃんのケータイには入ってるよね?」


「そうね」


三人はすぐに直樹のもとに戻った。


部屋に戻ると、聖人は一番に、兄の白衣のポケットを探ってみる。



「あった!」


手応えを感じて取り出した携帯電話は、衝撃の為に壊れていた。


「ダメだ。壊れてる……」


聖人が溜息を吐く。


こうなると残念ながら、井上に連絡を取る手段がない。


「まいったなぁ……」


「他に方法ってないのかな?」


梓が泣きそうな顔で聞いた。

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