絶滅危惧種『ヒト』
《私たちはWHO本部からの依頼で、日本にやってきました。私の名前はブライアン・ノートンです》


《依頼? WHOの方ではないのですか?》


一番先頭のリーダーっぽい男に綾乃は話しかける。



《ええ、私はアメリカの大学病院で、感染症を専門に研究をしております。

この度日本で新種のウイルスが発見されたという報告を受けまして、調査の為に日本のWHO協会にやってきたのです。

今日は一番最初の発病者が出たという、こちらの病院に案内をしてもらう予定だったのですが、

突然パンデミックが始まってしまったようで、一緒にこの病院に向かっていた案内役の日本人が発病してしまい、

彼が運転していた車を降りて、道に迷いながら、何とかこうやって辿りついたところです》


《そうですか……それはご苦労様です。でも……》



《でも?》


《この病院に、医師は一人もおりません……。おそらくこの敷地内で生きて歩いているのは私たちだけです》


《何てことだ! 日本の厚生労働省も、感染症研究所も、WHO協会も、今回の案件に詳しい者はみんな死んでしまったというのに……》


《そうですか……》


《まったく何の情報も得られないとは……。一からウイルスのことを調べなければならないのか……》


ブライアンは大袈裟に嘆いた。

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