絶滅危惧種『ヒト』
《あのぉ~》


《何ですか?》



《先程からウイルスとおっしゃってますが、今回のこれは、細菌だって聞いてますけど》



《な、何だって! 聞いたって誰に?》



《私の息子です。この病院で感染症の研究をしていました》


《息子さんは今、どこに?》


その問いに対して、綾乃は顔を歪めて首を振る。


それだけで、ブライアンは直樹の死を察した。


《そうですか……。それは残念です。では、息子さんがウイルスではなく、細菌とおっしゃったんですね?》


《え、ええ……。ちょっと待ってくださいね》


綾乃はそう言うと、聖人に向かって今回の細菌について、分かっていることを聞き、それをブライアンに通訳した。


《すみません》


そこで、隣にいた男が話しに入って来た。


《失礼だが、君は綾乃じゃないのか?》


突然名前を言われたので、綾乃は驚いて男の顔を見る。


《あなたは……ケビン。何でここに……》


綾乃は驚きのあまり、口を手で押さえ、目を真ん丸にした。


《WHOからの依頼でね。これでも向こうじゃ細菌学の第一人者なもんでね》


ケビンはニヤリと微笑んだ。


《彼はノボルの息子? 何となく面影があるんだが……》


《ええ、そうよ。次男の聖人と、そのガールフレンドの梓よ》


綾乃に紹介されると、ケビンは嬉しそうに聖人に向かった。


《初めまして、かつて君のお父上と、君の母上を取り合ったケビン・スミスと言います。よろしく》


ケビンはニヤッと笑う。


英会話の経験のない聖人ではあるが、何となく言ってる意味は分かった。

< 189 / 223 >

この作品をシェア

pagetop