絶滅危惧種『ヒト』
どれくらい時間がたったのだろう……?


梓はベッドの上に身体を起こすと、くしゃくしゃに丸まっている下着を拾い上げて、素早く身に着けていく。


行為の最中は全然気にならなかったのに、終わった後の今は、裸を見られるのが恥ずかしいのだ。


ついに初体験を済ませてしまった。


行為の前は、痛かったらイヤだなぁとか思って、不安でたまらなかったけれど、

いざしてみると、決してそんなことはなくて、梓は幸せな気持ちでいっぱいである。


今までは、聖人に付き合ってもらっていると感じていたのに、

なんだか今は、ようやく同じ立場になれて、互いに同じ重さで愛しあえているような気がした。


「梓……」


身体を起こした聖人にもう一度唇を寄せる。



「そろそろ帰らないと」


唇を離すと、梓は起き上がって服を着た。


「そうだな」


聖人もすぐに服を着る。


「聖人、愛してるよ」


「俺もだ」


服を着た聖人は、もう一度梓を引き寄せてキスをした。


感染症学科に戻ると、何となく空気が重い。


「どうかしたの?」


聖人は母に問いかけた。


「それがねぇ……唾液も、胃液も、胃酸も……どれも効果がなさそうなの」


「そんな……」


聖人はアメリカ人研究者たちのほうを見た。


そのとき……


梓の携帯電話が鳴る。

慌てて取り出すと、妹の栞からだった。
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