絶滅危惧種『ヒト』
『もしもしお姉ちゃん?』


「あ、うん。どうしたの?」


『どうしたのじゃないよ! 一時間くらいで帰るって言ったのに、全然帰ってこないし、電話はなかなか繋がらないし、お父さんは心配して原付バイクで見に行ったと思ったら、すぐに帰って来て街中死体だらけで臭いって機嫌が悪いし』


「ごめんごめん」


『今どこよ?』


「それが、訳があってまだ東城医大病院なの」


『何でぇーーーー』


「いや、だからちょっと色々あったんだってば」


『じゃあもう帰って来る?』


「それがまだ、もうちょっとかかりそうなのよ」


『何それ? あのさぁ、私は今日外に出てないから知らなかったんだけど、街中が大変なことになってるみたいなの。

もしかしたら、町内の人全員死んじゃってるかもしれない』


「はぁ? いくらなんでもそんなことあるわけないでしょ?」


『嘘じゃないってば、お父さんが原付バイクで周りを走ったけど、死体は山ほどあるのに、生きてる人は一人も見なかったって言ってるもん』


「そんな……」


『ねぇお姉ちゃん。何でみんな死んじゃったのに、私たちは死なないんだろうね?』


「えっ……」


栞の台詞を聞いた瞬間、梓の頭に、もの凄い衝撃が押し寄せてきた。

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