絶滅危惧種『ヒト』
「もしもし栞」


『ちょっとお姉ちゃん、何だったのよ?』


「氷よ」


『え?』


「まだあったよね氷」


『氷?』


「だからタカ叔父ちゃんのお土産の南極の氷」


『ああ、うん。たぶんまだ冷凍庫に残ってると思うけど』


「代わって」


『え?』


「お父さんと電話代わってって」



『ああ、ちょっと待って』


栞がそう言った後、すぐに父の彰洋が電話に出る。



「お父さんお願い。冷凍庫に残ってる南極の氷を、溶けないようにして今すぐバイクで東城医大病院まで持ってきて」


『え?』


「氷なの。私たちがまだ発病しないのは、南極の氷がワクチンの代わりになってるからだと思うの」


『ああ、なるほど、そういうことか、分かったすぐに行く』


「車は渋滞で動かないからバイクでね」


『ああ、分かってる』


そう言うと、彰洋は電話を切った。


「梓」


聖人が見つめて来る。


「すぐにお父さんがバイクで持ってきてくれるから」


梓は聖人に向かって笑顔で頷いた。
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