絶滅危惧種『ヒト』
「ちょぉおおおお。何でアンタが私のケータイ持ってるのよ!」



「ここに置いてあったから」



「いや、そういうことじゃなくて、っていうか、何て言って電話かけたのよ!」



「ん~~~と、岩崎梓の妹の栞ですけど、今南極から帰ってきた叔父が、どうしても桜小路さんにお会いしたいって言ってますので、もしお時間が都合良ろしかったら、今からうちに来てもらえないでしょうかって」


「おっ、栞、なかなかちゃんとした対応じゃないか。いつもの俺に対する言葉づかいしか知らないから、世間に出て通用しないんじゃないかって、心配してたんだぞ」


孝明がニヤッと笑う。



「ちょっと何がちゃんとした対応よ! 何でアンタはいつもいつもそういう余計なことをするのよ!」


梓が声を荒げた。


「まぁまぁ、そう言うな梓」


「言うわよ」



「で、その彼氏はどれくらいで来るんだ?」


「ん~と、10分くらいでって言ってた」


栞が答える。


「あら大変。まだご飯とか食べてないわよね? 何か作ってあげないと」


紀子は立ち上がるとキッチンに向かった。

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