絶滅危惧種『ヒト』
少したって梓の携帯電話が鳴る。


急いでポケットから取り出すと、電話は聖人からだった。



「もしもし」


『あのさぁ、今門脇って名前の散髪屋の角を南に曲がったんだけど、この辺りだったよね』


「あっ、うん。もうすぐそこ、今から迎えに行くから待ってて」


『ああ、頼む』


梓は外に向かいながら電話を切った。



「って言うか、マジで来るとは、たいしたヤツだな。梓の彼氏」


その姿を見送りながら、孝明が感心した。



「おい紀子! 俺はどうしとけば良いのかな?」


突然娘の彼氏が家にやってくる……。彰洋は急に不安になった。


こういう時の父親というのは、どうすれば良いのかが分からない。


「ちょ、義兄さんマジかよ。普段の冷静沈着さはどこに行っちゃったんだよ」


その様子を見た孝明は、ゲラゲラと笑い出した。

< 31 / 223 >

この作品をシェア

pagetop