絶滅危惧種『ヒト』
「いや、しないしない。するわけないだろ」


聖人も突然問い詰められたから焦った。


「ほらみろ梓、めちゃめちゃ焦ってるじゃないか。絶対するぞ」


孝明は調子に乗って責める。



「ちょ、ちょっと待ってください。みなさん冷静に」


聖人はいきなり初対面の、彼女の家族に責められて、たじたじになった。


「それよりこれ、良かったら」


聖人は手に持っていた紙袋をテーブルの上に置く。


「あああああああ、これモンシェルのシュークリームでしょ!」


栞が目を大きく見開いて、大きな声をあげた。


「うん。そうだよ」


「やったーーーー! タカ叔父ちゃん。彼の無罪は決定したから」



「え? そうなの?」


「当たり前じゃん。シュークリームをお土産に持ってきてくれる人で浮気する人はいないわ」


栞は何の確証もないことを、真剣な顔で言うと、すぐに紙袋の中に手を入れた。


「あら、こんなの良かったのに、それよりそこに座って、夕飯まだでしょ?」


そう言いながら、紀子は茶碗によそったご飯と、お茶と箸を、聖人の座った席の前に置く。


「あ、どうもすみません」


聖人はすぐにお辞儀をした。

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