絶滅危惧種『ヒト』
「ちょっとお父さん。本気にしないでよ! もう!」


「でも……」


「でもじゃないよ。まだ何にもしてないってば」



「本当に何もしてないんだな」


彰洋が梓の目を見つめる。



「あの、まだ全然そういう関係じゃありませんので、ご安心ください」


聖人がさわやかな笑顔で割って入った。



「いや、まぁ、あの、信じてるんだけどな」


彰洋は少しバツが悪そうにしながら腰を下ろす。



「よし、気に入った。じゃあオマエにもこれを飲ませてやる」


孝明はそういうと、南極の氷をグラスに入れて、それに水を入れてやった。


「これは?」


「南極の氷だ。何万年も前の単結晶なんだぜ」


「へぇ~凄い」


聖人はしげしげと見つめると、カラカラとグラスの中の氷を回してから、口をつけた。

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