絶滅危惧種『ヒト』
学校に着いて、自転車置き場に自転車を停めていると、ちょうど聖人がやって来た。


ちなみに聖人も自転車通学である。

勉強は出来るし、医者を目指しているのだから、私立の進学校に通えば良いのに、聖人は自宅から近い公立校に通っているのだ。


前にそのことを聞いたら、お父さんがお医者様だったにも関わらず、ほとんど稼いだお金をボランティアに使ったために、家にお金がないらしい。


お兄さんもお医者様なのに、まだただの研究員ってことで、そんなにいっぱいお給料をもらっていないらしいのだ。


聖人も将来お兄さんの後を追うらしいから、結婚すれば苦労するんだろうなぁと、梓はそのとき思ったけど、

直後に「この学校に来たおかげでオマエと出会えたから良かった」なんて爽やかな笑顔で言われたもんだから、もうメロメロになっちゃったのだ。


「おはよう」


「おはよう。昨日は突然呼び出しちゃってごめんね」


梓は突然呼びつけたことを謝った。


「いやいや、楽しかったよ。オマエの叔父さん本当に面白いよな」

 
「えっ、ちょっと何それ?」


タカ叔父ちゃんのことが話題に出たから、すぐに朋美がくいついてくる。


「いや、昨日突然梓の妹から電話がかかってきてさぁ、南極から帰ってきた叔父さんが、会いたがってるって言うもんだから」


「へぇ~そうなんだ。じゃあ私も帰らずにずっといれば良かった」


「ああ、いたんだ? そうか、残念だったね。ずっといれば良かったのに。すごく楽しかったよ」


聖人は昨日のことを思い出して、自然と笑顔になっていた。

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