絶滅危惧種『ヒト』
「あっ、そうだ。あのさぁ梓」


聖人が思い出して梓に話しかける。


「何?」


「実はさぁ、今まで梓のこと家族に言ってなかったんだけど、昨日バレちゃってさぁ」


聖人の顔を見て、梓は緊張した。


なぜ今まで聖人が秘密にしていたのかは分からないけど、やはり隠していたのにはそれなりの訳があるに違いない。

でも、言われなくても、何となくその理由は分かった。

なんせ相手は医師の家系である。

二流企業の係長の父とじゃ、家柄が違うとか言われるに決まっているのだ。


「で?」


梓は恐る恐る聞いてみた。


「母さんが今日絶対連れて来いって」


「えっ!?」


「今日は塾の日でもないし、良いよな?」


「ぅ……ぅん」


昨日無理矢理自宅に呼びつけた手前、自分が行くのはイヤだとは言いづらい。


「良かった」


聖人の笑顔を見ながら、梓は何とも気が重かった。

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