絶滅危惧種『ヒト』
食事を終えて洗い物を済ませると、時刻は7時を回ったところだった。


もう少し二人でいたいから、朋美は母に少しだけ遅くなるとメールを送った。


コーヒーを落としてカップに注ぐと、リビングのテーブルに運び、ソファに腰掛ける。


そのとき孝明が変な咳をした。


「風邪?」


朋美は少し心配になって聞いてみる。


「南極から一旦真夏のオーストラリアに行ってさぁ、そこから今度は真冬の日本だろ。ジジイだから身体が着いて行かないのかな?」


孝明が微笑む。


「熱は?」


朋美は咄嗟に身体を起こすと、孝明のオデコに自分のオデコを当てた。


いつも母に対してそうするから、自然にそうしたのだけど、ふと我に返ると目の前に孝明の目。


そして……唇。


ほとんど自然に、朋美は孝明にキスしていた。


慌てたのは孝明のほうだった。


「と、朋美ちゃん?」


「好きです」


「いや、で、でも……いいの?」


朋美は頷くと同時に、もう一度唇を寄せる。


今度はそのまま長く唇が重なり、引き寄せられて抱きしめられた。

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