絶滅危惧種『ヒト』
携帯電話にメールを受信している。

見ると朋美からだった。


朝の挨拶だけの簡単な内容だったけど、携帯電話のメールを貰うのは、南極に行く前に携帯電話を持っていたとき以来だから、すごく嬉しくて、すぐに返事を返した。


その後、軽く朝食を済ませた孝明は、職場である国立極地研究所に向かう。


もう南極に行きたくないから、仕事を辞めると昨日は言ったけど、そんなに頻繁に行けるわけではなく、実はもう南極に行くことはないかもしれないと思っている。


そうなるとこれからは、ずっと日本での仕事なのだけど、それはそれで正直つまらなかったりするのだ。


仕事がつまらないから辞めると言っても、今の御時世なかなか良い就職先もない。


そろそろ再婚も視野に入れたいし……。


ただ、そうなってくると、今の相手は朋美ということになる。


(朋美ちゃんかぁ……)


朋美はまだ17歳。彼女が結婚適齢期を迎えるのは、もう五年後くらいか? そのとき孝明は43歳になる。


そもそも今どきの若い娘が、そんなに長い間、こんなオジサンと付き合ってくれているのかも疑問だ。

とはいえ、今すぐ婚活なんか始めたら、朋美と梓に殺されてしまいかねない。


そうすると、昨夜の朋美に対しての行為は、ひとときの感情に酔ってしまっての、少し軽はずみな行動だったかもしれないと孝明は思った。

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