絶滅危惧種『ヒト』
「その結果色々と支障を来たし始めた地球が、人類の数を減らそうとして手を打っているとしたら」


「は?」


(いきなり変なことを言う。地球に意思はないでしょ? 無機物なんだから……)




「エイズ。エボラ出血熱。SARS。新型インフルエンザ……」


「それが地球の仕業だと?」



「ああ。こんなことを思うのは、医学者としては失格かもしれん。

でもなぁ、どうしてもそんな気がしてならないんだ。

おそらくまだ見ぬ新しいウイルスが発見され、そしてそれが人類の数を減らそうと猛威を奮うんじゃないかと……」



「だから……」


「え?」



「だから俺も父さんみたいな医者になって、新しいウイルスと戦いたいんじゃないか」


「ふっ」


「何が可笑しいのさ」



「だからそれが神を冒涜する行為なんじゃないのかと、俺は思い始めたんだよ」


「父さん……」



「次にアフリカから帰ったら、俺は一線を退くことにする。どうしてもオマエがこの道に進みたいなら、止めはしない。今まで俺が知り得た知識の全てを、オマエにくれてやる」



父の真剣な眼差し。


直樹は圧倒されて、またツバを飲み込んだ。

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