誠の華‐此処にいる幸せ‐
次の日の朝早くに音愛は土方の部屋を出た。
(さようなら。皆)
屯所の門に人影が見えた。門にもたれかかって手を組んでいる。
「土方さん……?」
「よぉ」
「朝早いですね」
うまく笑えているかわからない。
(土方さんの顔を見たら泣きそう…)
「もう行きますね。先方を任せては行けませんので」
「行くな」
「えっ…?」
「いや…すまん…幸せになれよ…」
月が顔を出す。切なさと苦しさを浮かび出させる。涙が一筋こぼれた。
(ありがとう。大好きでした。)
「さようなら」
口に出たのはお別れの言葉。彼には伝わらない音愛の思い。