【短編】俺の可愛い妹
暫くして、
「梓衣、今の何?」
そう呟いた。
「……告白」
あたしも呟いた。
「じゃなくて、その後の」
「キス……。あたしの気持ち」
「あ、そっ」
そう言うと、黙って車を運転し続けた。
女の子からキスなんてしちゃ駄目だった?
軽い女だって思った?
でもね、武ちゃん。
あたし、もう16歳なんだよ。
結婚だって出来る歳になったんだよ。
出会った頃みたいに子供じゃないんだよ。
もう、それだけじゃ物足りないんだよ。
可愛い妹でもいい。
そう思う、あたしと。
それだけじゃ嫌。
そう思う、あたしと。
あたしは、どっちを望んでいるの?
そう聞かれたら、あたしは可愛い妹のままじゃ嫌なんだ。
彼女。
贅沢な答えが欲しいの。
無言のままマンションの下で止められた車の中は静かで。
怒ってるのかな?
空気が重くて、苦しくなる。