【短編】俺の可愛い妹
「あーぁ。やっちまった」
唇を離すと、あたしを抱きしめ耳元で囁いた。
真っ赤になったあたしは、放心したまま身を任せる。
「手出さないつもりだったのに」
「武ちゃん?」
少し離れた隙間から、見上げた武ちゃんの頬は少しピンクに染まってて、バツが悪そうにあたしを見下ろしていた。
「俺、おっさんだからな」
「ふぇ?」
「おっさんは嫌になったって返品はきかねーからな」
「はぁ?」
「なるべく我慢するけど……
あんま誘惑しないでね、梓衣ちゃん?」
ニヤッと悪戯に笑った武ちゃん。
武ちゃんの服をギュッと掴んだあたしは、聞いてみた。
「武ちゃん、それってどういう意味!?」
「梓衣は俺の可愛い“彼女”になってくれるんだろ?」
「えぇぇ!?」
いっぱい聞きたい事があって。
だけど頭の中はパンクしそうで。
あたしは妹じゃないの?
武ちゃんは、あたしを好きなの?
どうして?
いつから?
頑張って聞いてみたのに、
「それは、また今度な。ほら、もう遅いから早く帰れ。
はっあー。タツに“ちゃんと”送れって言われたのになぁ」
困った顔を見せながら、呟く武ちゃんにまた上手く誤魔化された気がするけど。
それでもあたし、
『梓衣は俺の可愛い妹』
から
『梓衣は俺の可愛い彼女』
に昇進したみたいです♪
-END-
⇒後書