【短編】俺の可愛い妹
「彼女?」
「そ。だから悪いけど今日はこれで」
呆気に取られている女の腕を離し、梓衣と歩き出した。
「武ちゃん、いいのー?」
「ん?」
「さっきの人、怒ってなかった?」
「大丈夫っしょ」
そう悪戯に微笑むと、満面の笑みを零し見上げていた。
ツレのタツ。
その従妹、梓衣(シイ)と出会って3年。
今年から高校に通う梓衣は、バイト帰りに俺を見つけるのが趣味らしい。
最近染めた髪はエクステを付けてふわふわと揺れ、ちょっと大人びてメイクまでしている。
そんな梓衣を、こんな夜の繁華街でウロウロさせれるわけもなく、見つかってしまった俺は、勿論自宅まで送り届ける。
「ほい、梓衣」
駐車場に車を取りに向かい、助手席に置いた荷物を退け梓衣を乗せてアクセルを踏んだ。
隣ではニコニコ嬉しそうな顔をしながら、学校の事やバイト先の事を話し続ける。
そんな梓衣を乗せた車は、安全運転その言葉そのものに繁華街から住宅街へと走り続けた。