妄想ガールの王子様
「今日は星を撮ろうと思ってさ」

カバンから三脚と取り出して春田くんはそう言った。

「今日は天気もいいし、新月だからきっといい写真が撮れると思う」

「星か……。
夏の大三角形……とか?」

日野くんが空を仰ぐ。

雲一つない空にはたくさんの星が浮かんでいる。

「三つの一等星が大きな三角形に見える……昔習ったな」

春田くんはふっと笑って三脚を組み立てる。

「ベガ、アルタイル、デネブ……
何かあの星って俺たちみたいだな……」

その日野くんの声は波の音に吸い込まれるように消えていった。
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